映画「感染列島」を今だからこそ見なきゃいけないと思った
2009年の映画なので大分古いが、映画「感染列島」を見たので感想を書きたい。
この映画は公開当時気になってはいたものの結局見に行けなかったのだが、コロナで世界中が大変な事になっている今だからこそ見たいと思った。
同じようなウイルスパンデミック映画では「コンテイジョン」も有名だが、「感染列島」は日本が舞台なだけに自分はこちらの方が身近に感じられた。
病院という最前線で戦っている医師や看護師の皆さんには、本当に頭が下がる。
そして、パニック状態になった人間の心理や行動がどれも、フィクションとは言い切れない臨場感があった。
というか、ニュースとかで流れてくる情報そのものだった。
携帯がガラケーだったりと別の意味でも時代を感じさせられたが、そこはまあいい。
これを見たら、迂闊に地方脱出など出来なくなるはずである。
結局新型インフルエンザじゃないんかい・・・
映画はフィリピンの奥地で新型の鳥インフルエンザが発見されるところから始まる。
同じように日本でも鳥インフルエンザが発生し、ほぼ同時期に人間にも同じような症状が出始める。
このあたりが凄くえぐい。
まだ確証が無いにも関わらず、発生した養鶏場には非難が相次ぎ、その子供も学校でいじめにあう。
連日の嫌がらせやマスコミによる攻撃が後を絶たない。
専門家が太鼓判を押すほどに真面目な経営を行っていたオーナーは、それを苦に自殺する。
だがその直後になって、原因が鳥インフルエンザではなかったことが発覚するのだ。
今までの苦労はなんだったんだよ!?
新米医師でなくても叫びたくなる。
妻夫木の行動力が凄すぎる
この映画の主人公は、妻夫木聡が演じる若い救命救急医だ。
彼が診察した患者が、感染第一号となる。
感染封じ込めのためにWHOから派遣されてきた元カノ(壇れい)のやり方に最初は反発しながらも、次第に息を合わせて原因究明にあたっていく。
正直、現場の人手も物資も足りなくてワーワー言ってるわりにはこの二人がよく抜けるので「大丈夫なのか」と思ってしまうが、そこはフィクションだ。
この二人が話を進めないことには始まらない。
特に妻夫木などは、ウイルスを特定するために非合法な手段に手を染めたり、遠く国連にも加盟していないような国にまで行ったりする。
行動力が有りすぎる。
だがその甲斐もあり、最初は正体不明で解決の糸口すらなかったウイルスの発生源を特定できるのだ。
一介の市民病院の医師とは思えない主人公のこの行動力と信念に、見ているこちらも熱くなる。
ご都合主義だと言われても、ちょっと展開が急ピッチすぎるような気がしても、それは映画なのだから気にしてはいけない。
映画はフィクションでも、現に今この瞬間、同じようにウイルスと戦っている関係者たちがこの世界にはいるのだ。
彼らに敬意を表したい。
世紀末化していく日本
この映画では、日本でだけウイルスが蔓延する。
詳しくはネタバレになるので避けるが、ある国の一部地域を除き、本当に日本でしかパンデミックが起きないのである。
だから、他の国はすごくのんびりしている。
特に某国の新聞の見出しには「制裁日本」と書かれていたり、ウイルスの名称も「ブレイム(責める)」という、いかにも日本が何か悪いことをしたから天罰が下ったみたいな名前を付けられる。
作成した当時は何か意図があってそうしたのかもしれないが、それにしても酷すぎる。
最初はたった一人の感染者から始まったこのパンデミックは、人々が気づかないうちに徐々に拡散され地方へと広がっていく。
「ああ、感染拡大とはこのように起きるのだなあ」と、視覚的に分かりやすく表現されていた。
最終的に日本人の10人に1人が死亡するという恐ろしい被害を出したこのウイルスにより、政府は非常事態宣言(緊急事態宣言と同じ)を発令。
パンデミックの中心地である東京から他県への移動を禁止し、医療現場はパンク状態になり、スーパーでは買い占め騒動が起こり、終盤では「感染者をかくまうのは犯罪」という放送まで流れる。
それでも人々は移動する。
「新潟のおじいちゃんの所が安全だから」と一家で車に乗り込み、封鎖線を強引に突破してしまう。
それもこれも、恐怖と「家族を守りたい」という一心からだ。
また、爆笑問題の田中裕二が看護師の夫役で出演しているが、彼は仕事が休みなので家で幼い娘と2人で過ごしながら妻の無事を祈っている。
恐らく、非常事態宣言が出たため仕事が休業になったのだろう。
こんなところも、昨今の状況を知るだけにリアリティがあった。
街からは人影が消え、車やゴミが打ち捨てられ荒廃した日本は、さながら世紀末だ。
物資が不足した医療現場では「少しでも助かる見込みのある人を優先」せねばならなくなり、精神的にも体力的にも耐えかねた医療スタッフが続出し、そのスタッフの中からも感染者が現れる。
それでもなんとか1人でも多くの患者を助けたいと、彼らは奮闘するのだ。
マスクをしろ!マスクを!!
映画を観ている最中、何度「マスクをしろ!マスクを!!」と思ったか知れない。
観客としてはせっかくなのだから俳優さん達の顔を少しでも多く拝みたいのはやまやまなのだが、それにしても思う。
「もっとマスクをしてくれ!!」
パンデミックが本格化して政府がどれだけ警鐘を鳴らしても、マスクをしない人はしない。
特に夏緒が演じる神倉茜という少女だ。
人生辛すぎる真っただ中なのはわかるが、誰もいない遊園地に入り込んだり、やたらと自転車で外出ばかりしている。
不要不急の外出をするな!せめてマスクをつけろ!と思ってしまう。
案の定、物語後半には感染して病院に運び込まれていた。(言わんこっちゃない)
あと妻夫木と壇の2人もだ。
いくら街に人が全然いないからって、一応しておいた方が良いと思う。
特に妻夫木なんて、発生源の島に行ったりした時も「今更つけるのか!?」と思ったほどだった。
だが感染者と濃厚接触する機会が多かったにも関わらず、意外に大丈夫だった。
さすがに主人公だけあって、最初から最後まで、一番関わっていたのに結局彼だけが無事だった。
結構いろいろな俳優さんや芸人さんが出ていたし、個人的には嶋田久作が出演していたのが嬉しかった。
こんな時だからこそ、そして長い自粛でダレてきた気を引き締めるためにも、この映画を観てみてはどうだろうか。