ニール・ゲイマン「アメリカン・ゴッズ」感想
だいぶ更新が開いてしまった。
相変わらずコロナは収束せず、中国の動きで香港行きはもはや絶望的となってしまったが、今回はアメリカである。
ここ最近は気になる小説をひたすら読み続ける生活を送っているので、ぼちぼち感想などを書いていきたい。
今回書くのは、ニール・ゲイマン作「アメリカン・ゴッズ」である。
聞いたことがある人も聞いたことが無い人も、ゆるいオカルト系ファンタジーが好きな人ならきっと気に入ると思うので、どうかお付き合いください。
ていうか、ニール・ゲイマンて誰?
ニール・ゲイマンは古くはアメコミの原作などを手掛けていたイギリス人作家の1人で、主に神話やオカルトなどのファンタジー小説を書いている作家である。
近年は彼の小説がAmazonビデオでドラマ化され、特に「グッドオーメンズ」が腐女子界隈で人気を博したと聞いた。
まあ、あれも面白かったのだけど、天使と悪魔が世界滅亡をなんとか阻止しようとするコミカルテイストの話とは違い、「アメリカン・ゴッズ」はどちらかというとエログロありきの暗い話で自分としてはこちらの方が好きだった。
オタクとオカルト・神話は親和性が高い。
しかも映像が幻視的で美しく、とにかくエロい(大事な事なので二回言いました)。
残念ながらシーズン3がコロナの影響か制作が中断されているようで、待てど暮らせど公開される気配がないため、とうとう原作に手を出してしまった。
ニール・ゲイマンの小説を読むのはこれが初めてなのだが、自分にとって良かった点も悪かった点も含めて、備忘録として残しておきたい。
「アメリカン・ゴッズ」つまりアメリカの神々なわけで
まず「アメリカン・ゴッズ」が全く初見という人のために簡単なあらすじを言ってしまうと、主人公のシャドウ・ムーンという男性が神々の諍いに巻き込まれるというストーリーである。
今更言うまでもないが、人種のサラダボウルであるアメリカには多種多様な人々が住んでおり、ネイティブアメリカン以外は皆、他の国から移住してきた移民だ。
その移民たちが我が物顔で生活しているこの国の宗教事情って、一体どうなっているの?というのがこの物語の主題と言って良い。
つまり、神という存在が実在するとして、彼らを信仰していた人間が他の土地に移住した場合、その神はどうなってしまうのかという事だ。
結論から言うと、彼らがかつて暮らしていた国で信じられていた神たちも、彼らの信仰と共にアメリカにたどり着く。
そして細々とながら生きながらえているという設定である。
その多くが多神教の神々なのだが、人間が創り出し小さなコミュニティで圧倒的支持を得ていた彼らが、大きなコミュニティに流れ着くとどうなるか・・・。
当然信望者は減り、力が弱くなっていく。
しかも彼らをアメリカに連れてきた人々の子孫たちは、彼らは彼らで新しい神々を創造するから、パイが増えるごとに彼らの信者は減っていき、信仰の取り分は少なくなる。
新しい世代が信望する神とは、つまりは新しい力と価値観だ。
グローバリゼーションの神、ニューメディアの神、テクノロジーの神、マネーの神などなど。
そういった時代に合ったものたちに信者を奪われ、古い神々はどんどん見捨てられていく。
そして彼ら自身も資本主義経済の波に飲み込まれ、ある者は家畜の始末人、ある者はタクシードライバーになるなどして、人間のように細々と暮らしている。
そんな中、ある古い神の一人が他の神たちに告げる。
「このままでは終われない、力を合わせてやつらに対抗しよう」
この神こそが北欧神話の主神オーディンことウエンズデーであり、主人公シャドウを引っ張りまわす張本人なのだ。
結構内容違うね?
で、話を小説版の感想に戻すが、一言でいうと「結構内容ちがくね?」である。
もちろん話の大筋は一緒なのだが、各キャラクターの扱いに小説版とドラマ版でかなりの差がある。
特に大きいのが、シャドウの妻ローラ、イフリートと関係濃厚なサリム、SNSで復活を果たした古代の神ビルキスの3人だ。
ドラマ版ローラは、とにかく自分中心な性格で嫌われキャラ面が目立ったが、小説版では自分の事はさておき、兎に角シャドウを救いたい一心で動きまわっている。
勿論再び生きたい、ゾンビ状態からきちんと蘇生したいという願望はあるのだけど、あまり性格的な難が見えずらいのは、ドラマ版でロードパートナーだったレプラコーンとの絡みが一切ないせいだろう。
(レプラコーンの最後は、ドラマ版・小説版ともに気の毒だった・・・。)
次に真面目で不運なセールスマンのサリムだ。
ドラマ版ではイフリートと一夜を過ごした後、彼を追って行ってハウスオンザロックで再会後、彼の傍に居続けるためにがっつり旧神陣営に身を置いていたにも関わらず、小説版ではまったく出てこない。
イフリートとホテルに入ってやる事やって、そこで終了である。
イフリートが持っていたタクシー運転手の身分を引き継ぎ、新しい人生を手に入れるところで終わっている。
最後に、シバの女王ビルキスだが、この人が一番ショックだった。
ドラマ版の方は彼女の栄枯盛衰をかなりの尺を使って取り上げ、出会い系SNSを使って復活を果たしエネルギーチャージした後は、主役側と敵側両方にコネを持つトリックスター的な立ち位置にいたはずが、小説版ではあっさり退場している。
つまり、ドラマ版は小説版をかなり拡大解釈した、再構成したうえで制作されているのだ。
他にもアナンシが老人から若者になっていたり、テクニカルボーイがギーク系太っちょからスタイリッシュ系スレンダーになっていたりと、小説→ドラマでキャラクターの容姿もかなり違う。
ちなみに、主人公のシャドウ自体も髪あり→髪なしに変更されているので、ドラマ版シャドウを頭に思い浮かべながら読んでいると、一瞬シャドウと認識できなかったりした(笑)
個人的には古き神々の中で殆ど唯一の成功者ともいえるイースターのキャラクターが好きだったので、 物語終盤でも彼女の出番があったのが嬉しかった。
そして、小説のラストで明かされる真実が、果たしてドラマ版でも採用されるのか?
ストーリーの鍵を握るシャドウの獄中仲間ロー・キー・ライスミスの正体にシャドウが気づく日が来るのか?
お願いだから、ドラマ版がこのまま打ち切りにならない事を祈るばかりである。
盆ノ木至「吸血鬼すぐ死ぬ」アニメ化キター!
以前「アニメ化しねーかなー」と書いたマンガ「吸血鬼すぐ死ぬ」が本当にアニメ化するらしい。なにこれ凄い。
「笹に願い事書いて吊るしたら叶った」みたいな感じだ。
この情報が入ってきたのが昨日5月7日。おそらく8日の単行本発売に合わせて発表したと思われる。
いつもならそこまで「新刊出たら即GET!」にこだわらない自分だが、今回ばかりはテンションが上がって早速購入してしまった。
Amazonで注文して届くまでまてない!と気がはやり、通勤経路にある本屋にいそいそと立ち寄ったのだがまさかの「在庫切れ」であえなく撃沈。
これは中規模書店の仕入れの甘さを責めるべきか、それとも密かに「吸死」が売れ出している事を喜ぶべきか・・・。
泣く泣く諦めようかと思ったが、少し離れた場所にある小さい本屋の存在を思い出し足を向けてみるとあった。
ありがとうおばあちゃん!
本棚の前をウロウロしてる自分に「秋田書店の新刊は向こうだよ!」と大きな声で教えてくれてありがとう!
あまりの嬉しさと、今時珍しい地域密着型書店を応援したい気持ちもあって、買う予定ではなかった本まで買ってしまった。(黒鷺死体宅配便いつのまに新刊出てたんや・・・)
そんなわけで、今回は「吸血鬼すぐ死ぬ」15巻について書きます。
吸血鬼・ネッシーに見えるおっさん
新横浜にネッシーらしきものが現れる。
それを少年の心を忘れない大人2人(+カメラマン)が探しにいく話。
ネッシー改めハマッシーとの心温まるふれあい。
明らかになるハマッシーの悲惨な過去。なぜハマッシーは海を離れ新横浜にたどり着いたのか?
我々人類がこの悲しい運命(さだめ)を背負う恐竜にできる事とはなんなのか?
最後にハマッシー(おっさん)が見せた涙の意味とは!?
そんな感じの話です。
吸血鬼ドラルクがいっぱいコレクション
ドラルクの意外な一面がたくさん見られるゾ☆
プリクラってもう何年も撮ってないなって・・・
最近のは凄いらしいですね。
顔やスタイル補正できたり、スマホに画像送れたり。
ところでこの話だけ吸血鬼の名前が出てないのだが、吸血鬼・プリクラに映りこむ
ゲッターとかだろうか・・・。
LET'S!タマシング
この人の霊がゴールデンライオンタマリン(哺乳綱サル目オマキザル科)に憑りついて日本で生活してるというだけでもう面白いのだが、この人の下ネタっぷりが毎度群を抜いている。
本人の意図によらず(ていうか絶対ムッツリだろこの人)、今回もだいぶやらかしているが最後は割とカッコよく〆た。
まあサルなんだけども。
吸血鬼・下半身透明
お馴染み変態吸血鬼兄弟の3男が主役。
出番が多い割に、こんなに話のメインにくるのは初登場時以来じゃなかろうか。
今回、次兄(吸血鬼・マイクロビキニ)には割と塩対応なことが判明した。
吸血鬼・君がエッチなことを考えると星を降らせるおじさん
今回メインじゃないのに意外に大活躍だったおじさん。
影の主役。
なんとこのマンガには珍しく2話連続で話が続く。
ただしこのおじさんは出ない。
千葉から来た腕利きの女性ハンター・キズちゃんが、敵のメイス・アイナクと今後どうなっていくのか楽しみではある。
ドラウスパッパ
毎度通常運転なドラルクのパパ・ドラウスが主役。
今回はちゃんと息子にアポを取った。にも拘わらず待ち合わせ場所にたどり着けない。
新宿駅は慣れないと誰でも迷子になるから仕方がない。
息子に約束忘れられちゃっても負けないでパッパ!!
ドラルクが98回死ぬ
皆で寄ってたかってドラルクを殺しにかかる不穏な話。
ではなく、街を守るため1人が皆のために、皆が1人のために!
One for all, All for one.なお話。
唯一ヒナイチちゃんだけがドラルクに「すまん」と誤って殺してた。優しい。
カンタロウとナギリ
歩く迷惑カンタロウがナギリの家に押し掛ける話。
ある意味「吸死」中一番たちが悪い男カンタロウと、それに苦労させられる元辻切ナギリという最近ではすっかりポピュラーになった構図。
個人的には早くナギリをジョンに会わせてあげて欲しい。
吸血鬼・100円ショッパー
100円ショップって楽しいよね。
でもたまに300円のものとか売ってるからうっかりぬか喜びしたりして切ない。
吸血鬼・裏新横浜
住んだらおもしろそう。
吸血鬼・貧弱くそモヤシ
もはや悪口でしかない名前だが、何気に出番が多い。
ダンピールの漫画家・神在月シンジとも仲良くやってるみたいで良かった良かった。
ところで同じダンピールでもその能力を生かして吸血鬼退治をしている半田やミカヅキくんと違って貧弱モヤシな漫画家をしてるあたりダンピールも人それぞれだなと。
ダンピールなんて中二な設定背負って生まれてきても、生き方は人それぞれだなと考えた次第です。
「吸血鬼すぐ死ぬ」人気投票
アニメ化を祝して現在チャンピオンでは「吸血鬼すぐ死ぬ」の人気投票が行われている。
神様の言う通り、好きなキャラに何票でも自由に入れられるクレイジーな企画なようなので、気になるかたは下のツイートをご覧ください。
これが吸血鬼すぐ死ぬの人気投票だ pic.twitter.com/kZ2NNnMLMu
— ドラルク(吸血鬼すぐ死ぬアニメ化決定!!)(15巻5/8発売) (@bonnoki) 2020年5月7日
新刊メチャメチャ面白いのでみんな読んでね!☆
飛浩隆「廃園の天使」の復活を祝して
GWも終わりなので振り返りを行いたいと思う。
連休中、一度はブログを更新しようと思っていたのに気が付けば最終日だ。
思えば、いつも夏休みの宿題はギリギリまでやらない派だった。
人間そうそう本質は変わらない。
飛浩隆作品を3冊読んだ
この連休中に自分が「これだけは」と思いあらかじめ用意していたのが、言わずもがな読書だ。
つんどく状態で溜まってしまっている本を順番に片づけていった。
その中でも特に楽しみにしていたのが、飛浩隆さんの作品である。
SFファンならご存じだと思うが、寡作ながらも近年の日本SF界で大きな存在感を持つ作家さんだ。
この方の作品はこれまで代表作「廃園の天使シリーズ」しか読んだことがなかったのだが、そのうちの一つ「ラギッド・ガール」を再読して改めてハマってしまった。
なので、短編集などを連休に間に合うようにAmazonで注文しておいたのだ。
読んだ作品は以下の通りである。
- 「象られた力」
- 「自生の夢」
- 「ポリフォニック・イリュージョン」
最新作「零號琴」は他との兼ね合いもありキャパオーバーだったので、これは後のお楽しみにすることにした。
「象られた力」で描かれるスペースオペラ
短編集「象られた力」には4作品が収録されているが、ある特異な天才ピアニストを中心としたストーリー「デュオ」を除き、あとは宇宙が舞台である。
特に表題作である「象られた力」と「夜と泥と」は同じ世界観を共有しており、宇宙開発および人類が居住する惑星のテラフォーミングを管理する組織として「リットン&ステインズビー協会」なるものが登場する。
こういう設定すきだなあ。
個人的にはもうちょっとこの協会がらみでストーリーを広げて欲しい。
また別作品で登場する事を期待したい。
「自生の夢」に見る間宮潤堂の可能性
短編集「自生の夢」には7作品が収録されているが、このうち4作品は連作である。
この連作に登場するテクノロジーや企業はどれも現代を微妙にズラしたような設定なのだが、最初の3作品に登場する新世代の申し子アリス・ウォンが主人公かと思いきや実は違う。
真の主役は、間宮潤堂という男だ。
アリス・ウォンと間宮潤堂は、どちらも「言葉」という世界において卓越した才能を持っている。
アリス・ウォンが新技術を用いた詩作において世界中を虜にするアイドル的立ち位置である一方、間宮潤堂はその文章と言葉で人すら殺せるほどの力を持つ。
しかも間宮潤堂は、ストーリー開始時点で既に故人だ。
その既にこの世にいない男がなぜ、どのようにしてこの世界に蘇ったのかは作品を読んで頂きたいが、この作品が作られた経緯の方がどちらかと言うと面白い。
作者の飛浩隆先生いわく、この作品はある作家たちへの激励のために書かれた。
その作家とは、円城塔だ。
円城塔は、友人である伊藤計劃の絶筆「死者の帝国」を代わって書きあげたが、この
「自生の夢」はその作業へのエールであると飛先生は語る。
なぜこの作品がそのような意味を持つのかは、本の巻末にノートとして収録されているので、是非読んで欲しい。
もちろん、単純に作品としても楽しいし面白い。
特に間宮潤堂は飛先生も気に入っているらしく、若かりし頃の彼を主人公とした別作品も書いておられる。
こちらも、いずれどこかの時点で本にまとめられるとよいなあ。(掲載雑誌がもう手に入らないようなので)
個人的には、飛浩隆先生が映画版「機動警察パトレイバーⅡ」をお好きだという所にシンパシーを覚えて嬉しくなった。
いいよね、パトレイバー。
「ポリフォニック・イリュージョン」
最後に「ポリフォニック・イリュージョン」だが、こちらは飛先生の初期作品および書評やインタビューが纏められた本である。
個人的には特に短編小説「地球の裔」が好きだった。
他にもいろいろな作品が収められており、小説「星窓」は「自生の夢」に収められていたリミックスバージョンとは別バージョンになっている。
これを先に読んでおけば、「自生の夢」に収録されていた方のストーリーがなぜあのような事になっていたのかが解明する。
自分は「星窓リミックスバージョン」を先に読んでしまったので若干混乱した。
また、解説等には先の円城塔と伊藤計劃との関係についてより詳しく語られているので、こちらもファンにとっては嬉しいだろう。
自分は伊藤計劃の作品は未読だが、これを機会に読んでみたいと思った。
「廃園の天使」の復活
廃園の天使シリーズの第一作目「グラン・ヴァカンス」と、その設定短編集「ラギッド・ガール」を初めて読んだときは震えた。
たぶん、読んだことのある方はお分かりになるだろう。
先にも書いたように、飛浩隆先生は寡作だ。
もう30年以上作家をされている割には、発表された作品は少ない。
「廃園の天使」も、あの世界観を作り出すのに10年掛かっている。
最初にこのシリーズを読んだ時は、単行本が出てから6年くらいたっていたので正直ガッカリしたのだ。
「ひょっとしてこの作家さん、もう続きを書かないんじゃないか?」と。
あまりにも面白い作品ゆえに、そしてまだまだ解明していない設定や謎が多すぎるゆえに、読者としては歯がゆすぎるのだ。
物凄い寸止め感を味わわされる。
このシリーズは全3部作らしいが、失礼ながら作者がもうあまりお若くないので、要らない心配までしてしまう。
なので、求めても与えられない焦燥と、傷つきたく気持ちもあってこれまで無意識に飛浩隆を避けてきた。
それが、数年ぶりにふと「ラギッド・ガール」を読んでしまったがために再燃してしまったのである。
だが、こういう時の本好きのカンは侮れない。
なんと、最近になってこのシリーズの続編が連載されていたのだ!
SFマガジン2020年2月号より、「空の園丁」が開始されている。
飛浩隆氏の『空の園丁』ですが、SFマガジン来年2月号といいますか、今年の12月25日発売の2020年2月号、創刊60周年記念号からの連載となります。連載がどのぐらい続くかはわかりませんが、連載が終了してから単行本化までに7年もかからないように心掛けたいと思います。よろしくお願いします。 https://t.co/IMWeVqlHB0
— 塩澤快浩 (@shiozaway) 2019年7月29日
単行本化まで7年・・・。
先行きは遠いな。
映画「感染列島」を今だからこそ見なきゃいけないと思った
2009年の映画なので大分古いが、映画「感染列島」を見たので感想を書きたい。
この映画は公開当時気になってはいたものの結局見に行けなかったのだが、コロナで世界中が大変な事になっている今だからこそ見たいと思った。
同じようなウイルスパンデミック映画では「コンテイジョン」も有名だが、「感染列島」は日本が舞台なだけに自分はこちらの方が身近に感じられた。
病院という最前線で戦っている医師や看護師の皆さんには、本当に頭が下がる。
そして、パニック状態になった人間の心理や行動がどれも、フィクションとは言い切れない臨場感があった。
というか、ニュースとかで流れてくる情報そのものだった。
携帯がガラケーだったりと別の意味でも時代を感じさせられたが、そこはまあいい。
これを見たら、迂闊に地方脱出など出来なくなるはずである。
結局新型インフルエンザじゃないんかい・・・
映画はフィリピンの奥地で新型の鳥インフルエンザが発見されるところから始まる。
同じように日本でも鳥インフルエンザが発生し、ほぼ同時期に人間にも同じような症状が出始める。
このあたりが凄くえぐい。
まだ確証が無いにも関わらず、発生した養鶏場には非難が相次ぎ、その子供も学校でいじめにあう。
連日の嫌がらせやマスコミによる攻撃が後を絶たない。
専門家が太鼓判を押すほどに真面目な経営を行っていたオーナーは、それを苦に自殺する。
だがその直後になって、原因が鳥インフルエンザではなかったことが発覚するのだ。
今までの苦労はなんだったんだよ!?
新米医師でなくても叫びたくなる。
妻夫木の行動力が凄すぎる
この映画の主人公は、妻夫木聡が演じる若い救命救急医だ。
彼が診察した患者が、感染第一号となる。
感染封じ込めのためにWHOから派遣されてきた元カノ(壇れい)のやり方に最初は反発しながらも、次第に息を合わせて原因究明にあたっていく。
正直、現場の人手も物資も足りなくてワーワー言ってるわりにはこの二人がよく抜けるので「大丈夫なのか」と思ってしまうが、そこはフィクションだ。
この二人が話を進めないことには始まらない。
特に妻夫木などは、ウイルスを特定するために非合法な手段に手を染めたり、遠く国連にも加盟していないような国にまで行ったりする。
行動力が有りすぎる。
だがその甲斐もあり、最初は正体不明で解決の糸口すらなかったウイルスの発生源を特定できるのだ。
一介の市民病院の医師とは思えない主人公のこの行動力と信念に、見ているこちらも熱くなる。
ご都合主義だと言われても、ちょっと展開が急ピッチすぎるような気がしても、それは映画なのだから気にしてはいけない。
映画はフィクションでも、現に今この瞬間、同じようにウイルスと戦っている関係者たちがこの世界にはいるのだ。
彼らに敬意を表したい。
世紀末化していく日本
この映画では、日本でだけウイルスが蔓延する。
詳しくはネタバレになるので避けるが、ある国の一部地域を除き、本当に日本でしかパンデミックが起きないのである。
だから、他の国はすごくのんびりしている。
特に某国の新聞の見出しには「制裁日本」と書かれていたり、ウイルスの名称も「ブレイム(責める)」という、いかにも日本が何か悪いことをしたから天罰が下ったみたいな名前を付けられる。
作成した当時は何か意図があってそうしたのかもしれないが、それにしても酷すぎる。
最初はたった一人の感染者から始まったこのパンデミックは、人々が気づかないうちに徐々に拡散され地方へと広がっていく。
「ああ、感染拡大とはこのように起きるのだなあ」と、視覚的に分かりやすく表現されていた。
最終的に日本人の10人に1人が死亡するという恐ろしい被害を出したこのウイルスにより、政府は非常事態宣言(緊急事態宣言と同じ)を発令。
パンデミックの中心地である東京から他県への移動を禁止し、医療現場はパンク状態になり、スーパーでは買い占め騒動が起こり、終盤では「感染者をかくまうのは犯罪」という放送まで流れる。
それでも人々は移動する。
「新潟のおじいちゃんの所が安全だから」と一家で車に乗り込み、封鎖線を強引に突破してしまう。
それもこれも、恐怖と「家族を守りたい」という一心からだ。
また、爆笑問題の田中裕二が看護師の夫役で出演しているが、彼は仕事が休みなので家で幼い娘と2人で過ごしながら妻の無事を祈っている。
恐らく、非常事態宣言が出たため仕事が休業になったのだろう。
こんなところも、昨今の状況を知るだけにリアリティがあった。
街からは人影が消え、車やゴミが打ち捨てられ荒廃した日本は、さながら世紀末だ。
物資が不足した医療現場では「少しでも助かる見込みのある人を優先」せねばならなくなり、精神的にも体力的にも耐えかねた医療スタッフが続出し、そのスタッフの中からも感染者が現れる。
それでもなんとか1人でも多くの患者を助けたいと、彼らは奮闘するのだ。
マスクをしろ!マスクを!!
映画を観ている最中、何度「マスクをしろ!マスクを!!」と思ったか知れない。
観客としてはせっかくなのだから俳優さん達の顔を少しでも多く拝みたいのはやまやまなのだが、それにしても思う。
「もっとマスクをしてくれ!!」
パンデミックが本格化して政府がどれだけ警鐘を鳴らしても、マスクをしない人はしない。
特に夏緒が演じる神倉茜という少女だ。
人生辛すぎる真っただ中なのはわかるが、誰もいない遊園地に入り込んだり、やたらと自転車で外出ばかりしている。
不要不急の外出をするな!せめてマスクをつけろ!と思ってしまう。
案の定、物語後半には感染して病院に運び込まれていた。(言わんこっちゃない)
あと妻夫木と壇の2人もだ。
いくら街に人が全然いないからって、一応しておいた方が良いと思う。
特に妻夫木なんて、発生源の島に行ったりした時も「今更つけるのか!?」と思ったほどだった。
だが感染者と濃厚接触する機会が多かったにも関わらず、意外に大丈夫だった。
さすがに主人公だけあって、最初から最後まで、一番関わっていたのに結局彼だけが無事だった。
結構いろいろな俳優さんや芸人さんが出ていたし、個人的には嶋田久作が出演していたのが嬉しかった。
こんな時だからこそ、そして長い自粛でダレてきた気を引き締めるためにも、この映画を観てみてはどうだろうか。
ヘッドホンがモロモロする話
凄くどうでもよい事なのだが、最近ヘッドホンがモロモロする。
何のことだかよく分からないという人は幸いである。
おそらく、まだ新しいヘッドホンを使用しているのだろう。
レザーが劣化してきた
自分が使用しているヘッドホンは「Parrot Zik 3」というタイプであり、忘れもしない「マツコの知らない世界」でヘッドホンの世界が特集された時に出会った。
紹介されたその商品を見て文字通り画面越しに一目惚れした自分は、即座にAmazonで注文したのである。
確か3万円くらいはしたはずだ。
ずっと「ちょっと良いヘッドホンが欲しいな」とは思っており、自分にとって清水の舞台から飛び降りるような買い物だったが、事実もう6年くらいは使い続けているので満足の行く買い物だったと言えよう。
Bluetoothで接続できるうえ、ノイズキャンセラー機能やタッチ式コントロールパネル機能が付いているため部屋中これを付けてウロウロできる。
文字通り愛用品である。
だが、ここ最近この愛用のヘッドホンがモロモロする。
モロモロする理由としては、経年劣化によりレザーが劣化してきたせいだ。
このヘッドホンはほぼ全面がアイボリー色のレザー製といういかしたデザインなのだが、それがあだとなった。
耳当て部分は特に摩耗するため、皮が痛んでモロモロしだしたのだ。
物凄く実害があるかと言われればそうでもないが、モロモロして剥がれた皮の破片が顔にくっついていたり、床に落ちたりするので気になると言えば気になる。
それに、見た目もあまりよろしくない・・・。
だが、それ以外は今のところ問題なく使えるし、フランス製にも関わらず故障だって一度もした事はない。
ただ愛着もあるため、残念な気持ちはしていた。
モロモロの対策
正直なところ、当初はもう諦めていた。
「結構長く使ってるし、寿命ってことかな」と、そのうち買い替える気でいたのだ。
だが、ある商品に出会った事でその考えは一変した。
ヘッドホンカバーという物を見つけたのである。
これがどのような商品かというと、文字通りヘッドホンに取り付けるカバーだ。
自分のような、「ヘッドホンが最近モロモロするな」という人のための商品である。
同じような悩みを抱える人は、やはりたくさんいたのだ。
この商品はストレッチ性のある素材でできており、何度も洗濯できるので衛生面も問題ない。
それにカラーも豊富だ。
値段は約2,500円と凄く安いわけではないが、ヘッドホンをまるまる買い替えるよりは断然お得である。
貧乏性の自分にとって二千円以上は大金だが、思い切って買ってみる事にした。
割と快適だけど実は・・・
そして届いたのがこれである。
ちなみに、モロモロしたヘッドホンがこちら。
これに、これを取り付けて・・・こうじゃ!!
自分の写真があまり綺麗ではないので解りづらいが良い感じである。
見本写真より色が鮮やかではなかったので、「やっぱりグリーンじゃなくて紫にすれば良かったかなー」とも思ったが、まあ良い。
外観的にはバイカラーでカッコイイ。
二日ほど使ってみたが音質に問題はないし、タッチ機能もちゃんと反応する。
当分はこれで凌げそうである。
ただ一つ問題があるとすれば、「Parrot Zik 3」は頭頂部もレザーなのでこちらもモロモロしているという事だ。
これを解決するカバーは今のところ見つからない。
何か布でも巻くしかないだろうか・・・。
【続報】本の整理ってどうしてる?結構良い査定額が出たよ!
以前リサイクル業者に本を買い取ってもらう予定という記事を書いたが、本日とうとう査定額がメールで届いた。
なので、引き続き経過を書きたいと思う。
果たして気になるお値段は・・・
今回お願いした業者さんは、メディア買取ネット という会社だ。
今まではたいていブックなオフに頼んでいたが、今回は初めて新しいところに依頼した。
正直に言うと、ブックなオフさんの買い取り額があまり良くない気がしていたからだ。
恐らくこういった所は「査定基準」を設けてある意味平等に、ある意味機械的に処理しているだろうからそこに文句を言うつもりはない。
このシステムが不満なら、メルなカリとかで自力でさばけよという話である。
だが売れるかどうか分からないものをいちいち出品して管理したり、売れたら売れたで発送手続きなどするのは大変である。
そんな暇があれば、一冊でも多く本を読みたい。
つまり自分には向いていない。
そこで、試しに今回は違う業者にお願いしようと思ったわけだ。
以前の記事にも書いたが、メディア買取ネット さんは査定額が気に入らなければなんと無料で本を送り返してくれるという。
まあ、いくら値段が安くても送り返してもらった本をまたどこかに送る手続きをするのも面倒なので、どのみち自分は「OK」と返事をしてしまうだろう。
「そんな値段じゃ売れないね!」とつっぱねられるような強さがあれば、理不尽な上司の要求にも毅然と「NO!」と言えるはずである。
まあそれはともかく、査定額だ。
送ったのは小ぶりの段ボール1箱分である。
気になるお値段は、2,518円だった。
送った本やDVDの内容
正直驚いた。
本当はもっと安いと思っていたのだ。
いいとこ500円、多めに見積もっても1000円行くか行かないかくらいだと思っていた。
それが予想に反してこの値段である。
ちなみに送ったものの内容は、マンガ、小説、技術書、Blu-rayだ。
どれも古いものばかりだし、結構ボロいのもあった。
特に「村上海賊の娘」は上下巻揃っているとは言え、単行本である。
技術書もそれほど新しくもメジャーでもない内容のものだし、Blu-rayだってイルミネーションの「怪盗グルー」シリーズとは言えこれも古い。
なんなら、Amazonプライムに入っていればタダで見られるタイトルである。
一体どれがいくらで査定されたのか内訳が出ないので不明だが、とりあえず満足だ。
いや、大満足だった。
振込先の銀行も楽天銀行を指定できるので、これも有難い。
コロナのせいで大変な時期だろうに、査定額が出るまでの期間も発送から4日目と凄く早かった。
また、荷物が先方に届いたタイミングや、査定額をいちいちメールで報告してくれるのも安心感があったので良かった。
身分証明がめんどくさい
ただ一つ難点があるとすれば、身分証明の手続きが大変だという事だ。
これは近頃どの買取業者も厳しく行っているので、なにもこの会社に限った事ではない。
そもそも、自分の住所変更手続きが間に合わなかったせいで、現住所の記載された証明書を提示できなかったことに問題がある。
だがこういった場合にも、この業者さんはきちんと対応してくれるらしい。
会社から送られてくる書留が現住所に郵送され、それを受け取った段階で「証明完了」になるそうだ。
ありがてえな・・・。
とは言え、こんな手続きはそうそう必要になるものでもない。
次回以降はスムーズに買い取って貰えるだろう。
問題は、その「次回」が今回と同じく引っ越しのタイミングだった場合だ。
同じ過ちを犯さないよう、次回引っ越しの際は変更手続きは早めに行うよう肝に銘じようと思う。
「劇場版TRICKラストステージ」ってもう6年も前なんだ・・・
名作ドラマ「TRICK]が終了してもう17年になる。
私と同じく現在アラフォーのオタクはよくご存じだと思うが、このドラマは仲間由紀恵と阿部寛が織りなすミステリーともオカルトともギャグともつかない独特の世界観で大変面白かった。
誰しも若い頃に経験した記憶はハッキリしているし最近のことほどぼやけているが、
このドラマが放送されていた頃は自分はだいたい20代前半くらいだったはずなのでよく覚えている。
今日は、Amazonでなんとなく見た「劇場版TRICKラストステージ」について書きたい。
初期シリーズとのオーバーラップが嬉しい
この映画で山田と上田が赤道直下にある「赤道スンガイ共和国」に旅立つ。
もうこの時点で面白い。
ドラマシリーズ1の「母の泉」編に登場した怪しい教祖「霧島澄子」は俳優の菅井きんさんが演じていたが、思いっきりこれが元ネタである。
霧島澄子は他の映画でもちょくちょく名前や裏設定が繋がっていて何気に登場回数が多いキャラクターだが、とうとう国の名前にまでなってしまった。
実はこの国自体も、ドラマで死んだはずの霧島澄子が実は生き延びていて、「スンガイ=キン」という別人を装い国を建設したという設定になっている。
その証拠に空港や店などあちこちに彼女の肖像画が飾られているし、国民も手でハートを作って「オッカアサマー」と唱えているのだが山田と上田は気づかない。
もう遠い昔のこと過ぎて忘れてしまっているのかもしれないが、アレは記念すべき2人の初事件である。
視聴者にとっては勿論嬉しいし、現地の人たちに「オッカアサマー」をどう説明してやって貰ったのか想像するだけでニヤニヤしてしまった。
さらにラストでは、第一話で山田と上田が出会ったシーンが再現されている。
上田が「インチキ霊能力者を見破る」という名目で人を集め、最後に山田奈央子が登場する。
山田は例の封筒と100円玉のマジックで上田を騙し「私は本物です」と言う。
勿論、初めて会った時と違い上田はこのマジックのタネを知っているし、そもそも霊能力者を集めたのも1度目とは違う目的がある。
死んだはずの山田が帰って来て、「私は本物です」と言うのを涙目で見つめる上田に二人が歩いてきた約13年間の重みが凝縮されていた。
このラストは、実に良かった。
石原達也刑事の登場が謎
もう一つ古くからのファンをニヤリとさせたのが石原達也刑事の登場だろう。
石原刑事を演じた前原一輝さんはこの頃既に役者を引退していたが、スピンオフドラマ「警部補 矢部謙三」では少しだけカムバックしていたらしい。
自分はこのドラマを見ていないが、幸いAmazonプライムに入っているのを見つけたのでそのうちチェックしたいと思っている。
個人的には矢部の歴代部下の中で一番好きだったし、矢部との掛け合いも面白かった。
矢部が強い関西弁を喋る横で下手な広島弁を喋るキャラクターというのは、考えてみると濃すぎる気もするが不思議と気にならなかった。
むしろ矢部のカツラと石原の不自然な金髪の方に目が行ってしまっていた。
この映画のラストシーンでも自称霊能力者たちに交じってひたすら「アニイ!」と叫ぶだけの謎キャラとして登場していたが、一体なにがしたかったのだろうか。
そして、上田も完全に彼の存在を忘れてしまったのだろうか・・・。
少しくらい会話があっても良かったと思うのだが、上田はあっさり「もう帰って結構ですよ」と目も合わせずに告げるのでますます彼の登場の意味がわからなくなる。
ただ再登場させたかったにしても、どうせ使うならもう少し意味のある使い方をして欲しかった。
時事ネタが懐かしい
「TRICK」の楽しみの一つに時事ネタがある。
この映画の中でも、『履いてるサンダルの教室!』や『SP●●Kホルダーに違いない!』など所々に小ネタとして登場する。
自分は個人的に時事ネタが大好きだ。
リアルタイムで見る場合は勿論面白いし、ネタが古くなって「これってなんだっけ?」と既に忘れられた頃に見ても「そんなのあったなー」と懐かしい気分に浸れる。
同じく時事ネタが満載の映画「鷹の爪シリーズ」でも、今の若い人が見たら何のことやらさっぱり分からないようなネタが山ほど登場する。
人の記憶には濃淡があるからすぐに思い出せるネタとそうでないネタがあるが、意外とこういうストーリーの中で使われるものは思い出しやすい。
自分が若い頃に起こった事件などなら猶更だ。
鬼塚ちひろの「月光」を熱唱した
私と同じくらいの年齢のオタクには定番だった曲の一つが「月光」だ。
他にはポルノグラフィティの「アゲハ蝶」や天野月子の「菩提樹」などがあるが、それはまた別の機会にするとして。
自分も例に漏れず、カラオケに行けば一回は歌っていたと思う。
そして友達も歌っていた。
曲調がゆっくりだし音程も丁度いいので、そんなに歌に自信がない人間にも歌いやすいというのがこの歌の良いところである。
子供が歌いやすい歌が流行るのと同じで、オタクにも歌いやすい歌の方が恐らく市場浸透率は高い。
ドラマの主題歌は同じく鬼塚ちひろの「流星群」を始めいくつか変わったが、この映画のラストでは懐かしい「月光」が流れる。
上にも書いた山田と上田の出会いのシーンと同じく最初に戻ることで、不思議なことに曲を聴きながら「もう本当にこれで最後なんだな」と腑に落ちた。
そして、もう一度ドラマを最初から見たくなった。